1.2025年7月8日モバイルバッテリーの機内ルールが変わる!
概要と変更の重要性
2025年7月8日より、航空機内におけるモバイルバッテリーの取り扱いに関する新たなルールが施行されます。
この変更は、国土交通省航空局からの要請に基づき、日本を代表する航空会社である日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)をはじめとする国内の主要航空会社が導入するものです。
この新しい規則は、旅客の安全を確保することを最も重要な目的としており、機内でのモバイルバッテリーの適切な管理が、これまで以上に強く求められることになります。
なぜ今、ルールが変わるのか?
今回のルール変更の背景には、国内外の航空機内でモバイルバッテリーが原因となる発煙や発火といった安全上の事案が多数発生しているという深刻な状況があります。
モバイルバッテリーに広く使用されているリチウムイオン電池は、小型でありながら大容量の電力を供給できるという高い利便性を持つ一方で、衝撃や損傷、過充電などによって「熱暴走」と呼ばれる現象を引き起こし、最終的に発火に至る危険性がある「危険物」として認識されています。
航空機という閉鎖された空間で火災が発生した場合、その影響は甚大です。
過去の事例から得られた教訓を踏まえ、国土交通省は一層の安全性の向上を図るため、今回の新たな措置を講じることになりました。
2.国土交通省が定める新ルール!知っておくべき「義務」と「協力要請」
国土交通省の発表資料(「モバイルバッテリーの持込みにご注意ください!」)では、航空法第86条に基づく「義務事項」と、安全確保のための「協力要請事項」が明確に区別されています。
この区別を理解することは、旅行者にとって非常に重要です。
A. 航空法に基づく「義務事項」
これらの事項は法的拘束力を持つため、違反した場合には罰則の対象となる可能性があります。
1. 預け入れ手荷物への収納は厳禁!常に機内持ち込みを
モバイルバッテリー(予備バッテリーパックを含む)は、発火の危険性があるため、航空法により預け入れ手荷物として預けることが禁止されています。
これは、貨物室での火災発生時に発見が遅れ、消火活動が困難になることを防ぐためです。
ノートパソコンを充電するモバイルバッテリーも同様に、必ず機内持ち込み手荷物として機内へ持ち込む必要があります。
万が一、預け入れ手荷物内にモバイルバッテリーが発見された場合、フライトの遅延や手荷物の返却など、旅行計画に大きな影響が出る可能性があります。
2. ショート(短絡)防止措置の徹底:端子保護の重要性
予備のバッテリーパックや、電子機器から取り外したバッテリーの端子は、金属類との接触によるショート(短絡)を防ぐための措置が義務付けられています。
ショートは発熱や発火の原因となるため、この対策は極めて重要です。
具体的には、バッテリーの端子に絶縁テープを貼る、専用のケースや収納袋に入れる、または複数のバッテリーや金属品と同じ袋に入れないといった対策が必要です。
3. ワット時定格量(Wh)の確認:持ち込み可能な容量と個数制限
機内に持ち込み可能なモバイルバッテリーは、ワット時定格量(Wh)が160Wh以下のものに限られます。
160Whを超えるもの、またはWhの表示がないものは機内持ち込み・預け入れともに禁止されています。
容量に応じた個数制限も設けられています。
- 100Wh以下:個数制限なし。
- 100Wh超~160Wh以下:1人2個まで。
Wh(ワット時定格量)の計算方法とmAhからの目安:
Whは、バッテリーの公称電圧(V)と定格容量(Ah)を掛け合わせることで計算できます(Wh = V × Ah)。
多くのモバイルバッテリーはmAh(ミリアンペア時)で容量が記載されているため、mAh値を1000で割ってAhに換算する必要があります(例:10,000mAh = 10Ah) 。
ほとんどのモバイルバッテリーは、単一の電池セルで構成されており、定格電圧は3.7Vであることが多いため、以下の目安が参考になります 。
- 100Whの目安:約27,027mAh 。
- 160Whの目安:約43,243mAh 。
ただしノートパソコン用など、複数の電池を並列接続しているモバイルバッテリーの場合、表示されているmAhが大きくなくてもWh値が高くなる傾向があるため注意が必要です 。
必ずバッテリー本体に記載されているWh値を確認するか、不明な場合はメーカーに問い合わせて確認することが推奨されます。
このWh値の確認が義務付けられることで、消費者自身が自身のモバイルバッテリーの仕様を正確に把握する責任が増大します。
多くのモバイルバッテリーにはmAh表示しかない場合や、Wh表示があっても小さく見落としやすい場合があります。
今回の義務化により、空港でのチェックが厳格化すれば、Wh値が不明なバッテリーは持ち込みを拒否される可能性が高まります。
消費者は購入時にWh値を重視するようになり、メーカー側も製品パッケージや本体へのWh値の明確な表示、あるいは計算方法の案内をより一層強化する必要に迫られると考えられます。
以下にモバイルバッテリーの持ち込み制限に関する詳細を表にしてまとめました。
ワット時定格量(Wh) | 機内持ち込み可否 | 個数制限 | mAh目安(3.7V換算) | 備考 |
100Wh以下 | 〇 | 制限なし | 約27,027mAh以下 | ショート防止措置必須 |
100Wh超~160Wh以下 | 〇 | 1人2個まで | 約27,027mAh超~約43,243mAh以下 | ショート防止措置必須 |
160Wh超 | × | 禁止 | 約43,243mAh超 | 機内持ち込み・預け入れともに禁止 |
B.安全な空の旅のための「協力要請事項」
これらは法的義務ではありませんが、国土交通省および航空会社が安全確保のために強く推奨する事項です。乗客の積極的な協力が求められます。
1. 座席上の収納棚には入れないでください
モバイルバッテリーは、万が一の不具合発生時に速やかな対応ができるよう、座席上の収納棚(オーバーヘッドビン)には収納しないよう要請されています。
必ずお手元、または座席前ポケットなど、常に確認できる場所に保管することが求められます。
2. 機内での使用・充電時は常に状態を確認できる場所で
機内でモバイルバッテリーから携帯用電子機器へ充電する際、または機内電源からモバイルバッテリーへ充電する際は、常に状態が確認できる場所で行う必要があります。
異常(異臭、発熱、変形など)を感じた際は、速やかに客室乗務員へ知らせることが求められます。
3.主要航空会社の対応:JAL・ANAの具体的な案内
国土交通省からの要請を受け、日本の主要航空会社である日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)は、2025年7月8日から新たな取り扱いルールを導入します。
各社の共通点と独自の取り組み
JALとANAは、国土交通省の要請に基づき、モバイルバッテリーを座席上の収納棚に収納しないこと、および機内での充電・使用時は常に状態が確認できる場所で行うことを求めています。
また、モバイルバッテリーの預け入れ手荷物としての預かりは引き続き禁止されており、必ず機内持ち込み手荷物とするよう案内しています。
容量制限(160Wh以下、100Wh超~160Whは2個まで、100Wh以下は個数制限なし)や、ショート防止措置の徹底についても同様の指示を出しています。
特筆すべきは、ANAの独自の取り組みです。ANAは、収納棚への収納禁止や目視管理に加え、万一の事態に備え、機材に「Fire Resistant Bag(耐火バッグ)」を搭載していることが報じられています。
これは、発火事案が発生した場合に、被害の拡大を防ぐための具体的な安全対策であり、ANAの安全に対する積極的な姿勢を示しています。
主要な日本航空会社が共通のルールを導入する一方で、ANAが耐火バッグを導入している点は、航空会社が安全対策において独自の付加価値を提供しようとしていることを示唆しています。
共通の規制は最低限の安全基準ですが、ANAのような追加措置は、顧客に対する「私たちはさらに安全に配慮しています」というメッセージとなり、乗客の安心感に繋がり、結果的に顧客体験に影響を与える可能性があります。
国際線利用時の注意点
今回のルール変更は、主に日本の国土交通省の要請に基づくものですが、国際線を利用する際は、渡航先の国や利用する航空会社によって異なる条件が設けられている場合があります。
例えば、一部の外国航空会社(エアアジア、タイ国際航空など)では、すでに機内でのモバイルバッテリーの使用や充電を全面的に禁止しているケースも報告されています 。
日本国内のルールが明確化される一方で、国際線利用時には各航空会社や渡航先の国の規定が異なる可能性があり、旅行者自身がより能動的に情報を収集し、確認する責任が増大します。
多くの旅行者は、一度ルールを把握すればそれが普遍的だと考えがちですが、国際線ではそうではありません。
特に乗り継ぎ便や他社便を利用する場合、出発地でのルールと到着地でのルール、そして各航空会社のルールが異なる可能性があります。
これは、旅行者にとって予期せぬトラブルの原因となり得るため、国際線を利用する際は、必ず事前に利用する航空会社の最新の規定を確認することが極めて重要です。
4.旅行前に確認!モバイルバッテリーに関するQ&Aと実践的アドバイス
新ルールを理解し、安全な空の旅を楽しむために、旅行前に確認すべきポイントと実践的なアドバイスをまとめました。
Whの計算方法の再確認と表示の確認
多くのモバイルバッテリーにはmAh(ミリアンペア時)のみが記載されている場合があります。その場合、以下の計算式でWh(ワット時定格量)を算出できます。
- Wh = 公称電圧(V) × 定格容量(Ah)
- mAhをAhに換算するには、mAh値を1000で割ります(例:10,000mAh = 10Ah)。
例:定格容量 27,000mAh、公称電圧 3.7V のモバイルバッテリーの場合:
(27,000mAh ÷ 1000) × 3.7V = 27Ah × 3.7V = 99.9Wh となり、100Wh以下に分類されます。
注意点として、ノートパソコン用など、複数の電池を内蔵しているモバイルバッテリーは、表示されているmAhが大きくなくてもWh値が高くなることがあります。必ず本体に記載されているWh値を確認するか、不明な場合はメーカーに問い合わせるようにしてください 。
複数持ちの場合の注意点
100Wh超~160Wh以下のモバイルバッテリーは1人2個まで持ち込み可能です。
これを超える個数は持ち込めません。
複数のモバイルバッテリーを持ち込む際は、それぞれがショートしないよう、個別に絶縁テープを貼るか、専用ケースや収納袋に入れるのが良いでしょう。
また、金属製品と同じ袋に入れないように注意しましょう。
万が一の異常時の対応
機内でモバイルバッテリーが異常に発熱したり、異臭がしたり、変形したりといった異常を感じた場合は、決して自分で対処しようとせず、速やかに客室乗務員に知らせてください。
客室乗務員は、異常事態に対応するための訓練を受けており、適切な処置を行います(ANAの耐火バッグ活用など) 。
異常時の対応を明確にすることで、利用者のパニックを防ぎ、安全な行動を促すことができます。
古いモバイルバッテリーの確認
長年使用している古いモバイルバッテリーは、劣化により発火リスクが高まる可能性があります。
旅行前にバッテリーの状態を確認し、膨張している、充電がすぐに切れるなどの異常があれば、使用を控えるか、買い替えを検討することが賢明です。
預け入れ手荷物への誤収納防止策
出発直前に慌てて荷造りする際に、うっかり預け入れ手荷物に入れてしまうことを防ぐため、モバイルバッテリーは最初から機内持ち込み用のバッグに入れる習慣をつけましょう。
これらの実践的なアドバイスは、利用者がルールを「知っている」だけでなく「実践できる」ようにするために不可欠です。
具体的な計算例、よくある疑問への回答、そして緊急時の行動指針を提供することで、利用者の不安を解消し、正確な準備を促すことができます。
これは、単なる情報提供を超えた「ユーザーサポート」の役割を果たすものと言えるでしょう。
5.まとめ:安全な空の旅のために、新ルールを理解しよう
2025年7月8日からのモバイルバッテリーに関する新ルールは、航空機内での安全性を一層高めるための重要な変更です。
事前に知って準備する方が空港で知ってから準備するのでは気持ち的にも楽ですね。
これらのルールは、過去の発火・発煙事例から得られた教訓に基づき、国土交通省が主導し、各航空会社が協力して導入するものです。
特に、預け入れ手荷物への収納禁止、ショート防止措置、Wh値の確認は「義務」であり、航空法に基づき必ず守る必要があります 。
また、収納棚への収納禁止や機内での目視管理は「協力要請」ですが、万が一の事態に備える上で極めて重要です。
旅行前に自身のモバイルバッテリーのWh値を再確認し、適切な持ち込み方と使用方法を理解しておくことで、安心して空の旅を楽しむことができます。
安全な空の旅は、航空会社と乗客双方の協力によって成り立ちます。
新ルールを正しく理解し、実践することで、私たち一人ひとりが安全な環境作りに貢献することが求められます。

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